中小企業支援機関のモラルハザード

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平成10年に、


「中小企業金融安定化特別保証制度(以下「安定化」)」


という中小企業施策がスタートしました。


これは、当時貸し渋り貸し剥がしに遭っていた中小企業の資金繰りを


支援するために創設された施策です。


無担保の上限は、「5000万円」または「月商の3倍」の


どちらか低い方でした。



①今までの利用残とは完全な別枠、


②審査基準が甘い(ネガティブリスト方式*1


ということもあり、開始当初から申込みが殺到したそうです。


で、具体的には、担当者1人当たり1日100件程度の申込が


あったようです。



1人で1日100件。


1件当たり5分から10分で片付けないといけません。


・・・正直言って審査できません。


(通常だと、大体1人あたり1日10〜20件くらいなんです。)


本当に、書類が揃ってるかどうかだけの形式的な審査になってしまったようです。


返済能力なんかはほとんど考えてなかったです。


このへん、僕の勤め先も、金融機関も完全に


審査能力を喪失してました。


ええ、完全なモラルハザードです。




結局、焦付が発生しても、


①80%は中小企業金融公庫(当時は中小企業信用保険公庫)からの
 保険金で補填。


②20%は国から補填


されるので、僕の勤め先は痛くも痒くもないんですね。


審査は、今では考えられないくらい、激甘になってしまいました。


その結果、数千億の焦付が出てしまったわけなんですよ。



結局、この安定化は平成13年3月で終了しました。


そうすると中小企業に残るのは、安定化を含めた



借金の山



なんですね。


月々の重い返済負担がのしかかります。


ちなみに5000万円を5年で借りると、


元本だけで月々83万円返さないといけません。


で、この返済負担を和らげるために導入された制度が、


資金繰り円滑化借換保証制度


です。


この制度を使うと、


月々83万円返済していた企業でも、


月々の返済を20万円以下に抑えることが可能になります。


続きはまた今度。

*1:一定の否決要件に当てはまらない限り、原則融資を受けられるというものです。